私が無収入になったら、
家賃のかからない実家に戻るだろう、と母は思っていた。
そうはならないとわかったら、
当てつけのように、家の価値の問い合わせを始めた。
私のアパートの周辺には、
商業施設や病院、役所、図書館、全てが揃っている。
私の暮らしはこの街にある。
老後、何も無い町の実家では暮らせない・・
と思うのは、しょうがないことではないか。
実家は、田舎でも立地条件はいいし、
丈夫で造りのいい家だから、
価値があると母は思っていた。
でも、築40年も過ぎれば、家の価値はゼロ、
土地にしか値段がつかない。
その土地も立地条件はいいけれど、所詮田舎の土地。
昔の半分だと母は嘆いていた。
先月母親が他界したばかりの義兄の実家を、
買いたいと言う人が現れたらしい。
まだ家の主がいなくなって、
一ヶ月も経っていないというのに。
田舎の町で、空き家のままというのが多いだけに
こんな良い話は無い
これで私の母の"家を売る"という考えに
拍車がかかるだろう。
でも、ちょっと待って。
母は、まだ元気で暮らしている。
いつか住めなくなる時が来ても、
それは子供に任せたらいいんじゃない?
私のことを、子供いないし、賃貸だし、
気楽で「いいね」と母達は思っている。
私に言わせれば、子供がいるし、貯金もあるから、
母達の方がよっぽど「いいね」だ。
私はいつかお金が足りなくて病院に掛かれず、
生きるのを諦めなきゃならない日が
来るんじゃないか、と思う。(それはそれで運命だ)
そんなこと、母達には言わないけれどね。