絵に描いたなら、8割ほどが漆黒の空。
線路の向こうと、
後方の駅舎の向こうに
家々の明かりが、ぽつんぽつんと見えるから、
人はいるのだと安心する。
この景色、葉祥明の描く絵に似てる。
でも、星が一つも出ていなくて、
メルヘンチックとかそんなかわいい絵じゃない。
星空だったなら、銀河鉄道999が見えるかも、と思う。
今夜はむしろ、千と千尋のあの電車が来そうな感じだ。
限りなく音を消したなら、
こんな感じなのだろうと思うくらいの静けさだった。
時々、国道の方から車が走り去る音がする。
それが聞こえなくなったら、
またドーンとした静けさだ。
そんな暗くて、静かなホームで
ひとり電車を待っていた。
時々、誰か来ないかと期待して振り返ってはみるけれど、
誰もいない。
だんだん静けさを愉しむというより、怖くなってくる。
お化けが出そうとかじゃなく、
待つ人のいない遠くの街に独りで、
車で向かう旅の怖さに似ている。
少し遠くの踏切の、遮断機の下りる音が
コンコン、コンコンと忙しく鳴り出した。
小さな明るい光が、だんだん電車の形になって
近づいて来た。
そして一両だけの車両のドアが、開いた。