想うままひとり暮らし

16才から始めたひとり暮らし、60代になった今もこれからも

魔法の言葉

雨が降っているから、今日は外出をしないでおこう。
腰や足が痛いから、少し良くなってから仕事探しを始めよう。
根元の白髪が目立つようになったから、
染めてから予定を入れよう。
いろいろ理由をつけて、なんでも後回しにするクセがある。
動き出すと次々とやっていくのに、
どうもスタートする決断力が乏しい。

過去の仕事を他人事のように思い出す。
よくあんなことやっていたなー。
今は、出来ないし、やりたくない。
弱気になる理由は、言うまでもなく"老い"だ。

前から歩いてくる人をサッと避けられない反射神経、
メガネをかけていても見づらい文字、
なんて言ったかわからないことが増えた耳。
悲しいくらい、これまで哀れな目で見ていた
お年寄りに近づいている。

従姉妹が「(自分が)還暦を過ぎた」と驚いて言った時、
かなり年下だった私は、驚いたふりをしていた。
本人以外は、違和感もなく、正しく認識している哀しさ。

「歳を取ったら、なんでも減っていく一方だ」と
寂しそうに話した入居者(80代男性)の方に
「今までたくさん持ち過ぎていたんですよ。
お金もあるし、背も高いし、カッコイイし。。」と言ったら、
「なんか元気が出て来た」とキラキラした笑顔になった。
娘さんに何度も同じ話をすることを
非難され落ち込んでいた入居者(80代女性)の方に
「先生は大事なことを何度も言うように、
大事なこと、強く思っていることは何度でも言うものなんですよ。
認知症なんかじゃないですよ」と言うと、ホッとした笑顔を見せた。

ふっと、相手を喜ばす魔法のような言葉が浮かぶ。
(思っていないことは言わない)
時々、魔法の言葉を誰か言ってくれないかと思ったりする。