雨が降っているから、今日は外出をしないでおこう。
腰や足が痛いから、少し良くなってから仕事探しを始めよう。
根元の白髪が目立つようになったから、
染めてから予定を入れよう。
いろいろ理由をつけて、なんでも後回しにするクセがある。
動き出すと次々とやっていくのに、
どうもスタートする決断力が乏しい。
過去の仕事を他人事のように思い出す。
よくあんなことやっていたなー。
今は、出来ないし、やりたくない。
弱気になる理由は、言うまでもなく"老い"だ。
前から歩いてくる人をサッと避けられない反射神経、
メガネをかけていても見づらい文字、
なんて言ったかわからないことが増えた耳。
悲しいくらい、これまで哀れな目で見ていた
お年寄りに近づいている。
従姉妹が「(自分が)還暦を過ぎた」と驚いて言った時、
かなり年下だった私は、驚いたふりをしていた。
本人以外は、違和感もなく、正しく認識している哀しさ。
「歳を取ったら、なんでも減っていく一方だ」と
寂しそうに話した入居者(80代男性)の方に
「今までたくさん持ち過ぎていたんですよ。
お金もあるし、背も高いし、カッコイイし。。」と言ったら、
「なんか元気が出て来た」とキラキラした笑顔になった。
娘さんに何度も同じ話をすることを
非難され落ち込んでいた入居者(80代女性)の方に
「先生は大事なことを何度も言うように、
大事なこと、強く思っていることは何度でも言うものなんですよ。
認知症なんかじゃないですよ」と言うと、ホッとした笑顔を見せた。
ふっと、相手を喜ばす魔法のような言葉が浮かぶ。
(思っていないことは言わない)
時々、魔法の言葉を誰か言ってくれないかと思ったりする。