想うままひとり暮らし

16才から始めたひとり暮らし、60代になった今もこれからも

別れの風景

弟が準備した相続登記の書類に
実印を押すために、姉と二人で実家に行った。
相続登記の手続きの話を弟が始めたことから、
避けていた"相続"とか、
"死ぬ"話がよく出るようになった。
何かあってからでは遅いので、
普段から話あっていた方が良いというが、
それが普通の話題になると、話が広がっていき、
母親と微妙な空気になって、
しばらく電話をかけていなかった。
だから、姉が一緒とは言っても、
実家に行くのは気が重かった。

それぞれに重い日々を過ごしていたが、
朝、体調が良くなかったという母を残し、
姉と2人で父や祖父のお墓参りに行った。
帰って来た頃には、いつもどおりに戻っていた。

先に帰る姉の見送りに母が出た。
「姉ちゃんは、一度も振り返らなかった」
と言って戻ってきた。
少し経って次に私が帰る時、
"いつもは出てこない"のに出て来た。
後方に見送っている母がいると思い、
"いつもは振り返らない"私は、振り返った。
手を振っている母がいた。
いつもしないことが重なると、縁起悪いことを考える。

16才から親元を離れているから、
実家から帰る時、会いに来た親と別れる時、
たくさん"別れ"ていて、別れには慣れている。
でも、これが最後になるかもしれないと
考えてしまうようなことは、昔はなかった。
こんなこと書きながら涙を浮かべると、
父の時のことを思い出し、
縁起でもない、縁起でもない、と思う。

親がいれば、誰にでも、何度でも訪れる、
こんな不安な気持ちとの戦い。
今週、パークゴルフの大会に出る予定の母はきっと、
怒って笑うだろう。
私だって、もうすぐ死にそうな高齢者、
と思われたら、怒るよ。