階段を降りる時の不安、
数年前まで感じたことのない不安だ。
エレベーターを使う頻度が増えた。
足の痛みは、安い靴のせいかもしれない、
だいたい脱ぐのが恥ずかしいような安い靴を
履き続けていることが悪の根源なのだ、と思い、
ちょっといい靴を買おうとショッピングモールに行った。
開店時間前に並んでいるのは、
杖をついていたり、やっと歩いているような高齢者ばかり。
店内を見渡してみたら、施設かと思った。
サ高住内にいる時と、外にいる時と、
明らかに高齢者を見る時の気持ちが違う。
あんなに優しく献身的に尽くしたい気持ちにさせた高齢者が、
外に出ると、高齢化社会を作るただの人々にしか見えない。
第一印象が"魔女"だったあの人も、またいた。
どうして髪を振り乱したままなのだろう?
ふと、気が付いたことがある。
高齢者は、鏡を(見たくないから)見ない。
うちの母親に3倍の鏡を渡し、メーク直しを勧めたら、
(はっきり見えて嫌だから)見ない、と言った。
また、見た目誰が見てもかなりのお爺さんが、
「(デイサービスで)あんな年寄りの中に入いるのは嫌だ」
と言っていたのを思い出す。
老いた姿を見たくないからと、いつからか鏡を見なくなる。
他人からどう見られているかを考えなくなり、
自分の"記憶"と"心"だけで、今の自分を見ている。
自分は、高齢者だと正しく認識出来ていない。
だから、危ないから運転をするなと言っても聞かないし、
若い人が着ている服を買おうとしたりする。
私はいつもメガネをかけていないので、
セルフレジを操作する時には、見えないまま適当にやっている。
時々、20代の店員さんが近寄ってきて、優しく教えようとする。
そう、私がお年寄りに優しく説明していた口調で…