想うままひとり暮らし

16才から始めたひとり暮らし、60代になった今もこれからも

天国にある哀しみ

サ高住というのは、地上にある"天国"だ。
介護施設で働いたことがないけれど、
たぶん、施設とは全く違う空気が流れている。
自立している裕福な高齢者の棲み処、それがサ高住。
こんな所で暮らしたいと思っている高齢者や
両親をこんなところに「入れたい」と考えている人も
多くいることだろう。

レストランで食事対応をしている時に
食事される入居者の姿を眺めながら、
元気な姿を見られる幸せを感じている。
いつまでも、同じ景色を見ていたいと。
でも、それは無理なこと。
だって、ここは高齢者住宅。
"いつまでも"にも限界がある。

先月私が救急車を要請して、
命を救ったように思っていたHさんは、
大腸がんが新たに見つかり、余命宣告をされた…。
私を娘のように思い、私も父のように思っていた人。
「長生きしたら、息子達に迷惑をかけるから
早く逝きたい」と笑って言っていたHさんだった。

こういう時、かける言葉が見つからない。
ショックと言えばショックなのだが、
宣告を受けているご本人の気持ちになれない。
どうすればいいのか、何を言ったらいいのか。
私の父は83才で他界した。
父より10年以上長く生き、
ここで自立し奥様と暮らしていたHさん。
突然、命の期限を知らさせた時、
人はどう心を整理していくのか。

私は、あの時、救急車を要請しなかった方が
良かったんじゃないか、とも思っている。
そうしたら、"余命"に怯える日々を
過ごさずに済んだんじゃないか、と。

天国にも、数々の哀しみが存在している。