サ高住というのは、地上にある"天国"だ。
介護施設で働いたことがないけれど、
たぶん、施設とは全く違う空気が流れている。
自立している裕福な高齢者の棲み処、それがサ高住。
こんな所で暮らしたいと思っている高齢者や
両親をこんなところに「入れたい」と考えている人も
多くいることだろう。
レストランで食事対応をしている時に
食事される入居者の姿を眺めながら、
元気な姿を見られる幸せを感じている。
いつまでも、同じ景色を見ていたいと。
でも、それは無理なこと。
だって、ここは高齢者住宅。
"いつまでも"にも限界がある。
先月私が救急車を要請して、
命を救ったように思っていたHさんは、
大腸がんが新たに見つかり、余命宣告をされた…。
私を娘のように思い、私も父のように思っていた人。
「長生きしたら、息子達に迷惑をかけるから
早く逝きたい」と笑って言っていたHさんだった。
こういう時、かける言葉が見つからない。
ショックと言えばショックなのだが、
宣告を受けているご本人の気持ちになれない。
どうすればいいのか、何を言ったらいいのか。
私の父は83才で他界した。
父より10年以上長く生き、
ここで自立し奥様と暮らしていたHさん。
突然、命の期限を知らさせた時、
人はどう心を整理していくのか。
私は、あの時、救急車を要請しなかった方が
良かったんじゃないか、とも思っている。
そうしたら、"余命"に怯える日々を
過ごさずに済んだんじゃないか、と。
天国にも、数々の哀しみが存在している。