想うままひとり暮らし

16才から始めたひとり暮らし、60代になった今もこれからも

家族の幻想

救急車を呼んだ日、パトカーも来ていた。
それを見ていた方がいたという段階で
逝去されたことを隠し通せないかもしれないと思っていた。
でも、まさか、ご家族が喪服で位牌を持って
サ高住の住宅に訪ねて来るとは思わなかった。
それで「入院している」という嘘は、不要になった。

サ高住に入居している父親に会いに来ることもなく、
電話をするでもなく(難聴だから話が出来なかったせいもあるが)
二度と会えなくなってから、
息子二人は配偶者と共にやってきた。
相続のお金の関係で敷金がいくらだったか
金額も知りたいという電話も入った。
確かにそれも重要なことだけれど。

私の勤務するサ高住は、豪華なホテルのようだと言われる。
そこに住んでいる高齢者は、
裕福で幸せそうに見えているだろう。
でも、亡くなった彼のように
家族との関わりが薄いとかほとんど無い人も少なくない。
死んだ時だけ連絡をほしいと言われている人も珍しくない。
虚しくなる。

私は、早くから親元を離れているので、
同居する"家族"がどんなものだか知らないのかもしれない。
一時実家に帰って暮らした時、
両親と無言で食事するのがとても苦痛だった。
母は、これが普通なのだと言った。
たまに話すことといえば、
「これからどうするんだ」とか、
独身でいると世間体が悪いとか
そんな話ばかりだった。

"家族"という言葉から、温かさを感じるのは、
子供が子供の時だけではないだろうか。
子供も高齢になり、親はもっと高齢になり、
高齢者同士になった時には、もう温かさなんかより、
冷たさを感じることが多くなる。