想うままひとり暮らし

16才から始めたひとり暮らし、60代になった今もこれからも

小猛獣との別れ

前の職場にいたパート女性(60代後半)を
心の中で"猛獣"と呼んでいた。
彼女の側で働くことになった人は、次々辞めた。
本人曰く、その度に教えたりしなければならないから、
毎回大変な思いをして、「私が大変」と嘆く。
アンタが辞めさせているのだから、
自業自得だと思いながら、「大変ですね」と慰めていた。

猛獣は、どこにでもいて、
今日でお別れする彼女もまた小猛獣だった。
介護の仕事をしていたというから、
もしもの時には頼りになる人だと思ったが、
第一印象は、あまり良くなかった。
体型で判断してはいけないけれど、
太り過ぎていると、"節制の無い人"と思ってしまう。
それは食生活だけじゃなく、人に対しても。
「感情をすぐに表に出す」「怖い」
入居者からの評価は、そんな言葉が多かった。
気さくで面白いと感じていた人はどのくらいいるだろう。
今年の初め頃から始まった入居者のクレーマー化は、
彼女の言動に対するイライラもあっただろう。
「会社が悪い」というのが原因なら、
同じ会社が運営している他の住宅の入居者も
同じくクレーマー化するはずだ。

今日で最後、交代で重なる時間だけの辛抱だ。
今日は、出勤してどんな言いがかりを付けられるだろう。
去る人からの指導や指摘は、もう要らない。
「(体は大き過ぎる位大きいけれど)顔は、可愛いね」
なんとか長所を見つけて、ご機嫌を取っていたが
そんな気遣いももう要らない。

「お世話になりました」なんて言わないだろう。
私も言わないつもり。
今日が最後と気付いていないふりをする。
小猛獣の彼女が、どの程度"立つ鳥跡を濁さず"か、
見るのを楽しみにして出勤する。