前の職場にいたパート女性(60代後半)を
心の中で"猛獣"と呼んでいた。
彼女の側で働くことになった人は、次々辞めた。
本人曰く、その度に教えたりしなければならないから、
毎回大変な思いをして、「私が大変」と嘆く。
アンタが辞めさせているのだから、
自業自得だと思いながら、「大変ですね」と慰めていた。
猛獣は、どこにでもいて、
今日でお別れする彼女もまた小猛獣だった。
介護の仕事をしていたというから、
もしもの時には頼りになる人だと思ったが、
第一印象は、あまり良くなかった。
体型で判断してはいけないけれど、
太り過ぎていると、"節制の無い人"と思ってしまう。
それは食生活だけじゃなく、人に対しても。
「感情をすぐに表に出す」「怖い」
入居者からの評価は、そんな言葉が多かった。
気さくで面白いと感じていた人はどのくらいいるだろう。
今年の初め頃から始まった入居者のクレーマー化は、
彼女の言動に対するイライラもあっただろう。
「会社が悪い」というのが原因なら、
同じ会社が運営している他の住宅の入居者も
同じくクレーマー化するはずだ。
今日で最後、交代で重なる時間だけの辛抱だ。
今日は、出勤してどんな言いがかりを付けられるだろう。
去る人からの指導や指摘は、もう要らない。
「(体は大き過ぎる位大きいけれど)顔は、可愛いね」
なんとか長所を見つけて、ご機嫌を取っていたが
そんな気遣いももう要らない。
「お世話になりました」なんて言わないだろう。
私も言わないつもり。
今日が最後と気付いていないふりをする。
小猛獣の彼女が、どの程度"立つ鳥跡を濁さず"か、
見るのを楽しみにして出勤する。