想うままひとり暮らし

16才から始めたひとり暮らし、60代になった今もこれからも

酒飲み女に憧れて

お酒が飲めないと言うと、
人生の半分を損しているとよく言われた。
美味しくないし、飲むと気持ち悪くなる。
その後には、吐くか寝るかだ。
この世からお酒がなくなっても、なんの問題も無いと思っていた。
でも、飲めるようになりたかった。
短大生の頃にウイスキーのボトルを買い、
一口飲んで胸が悪くなり、そのまま部屋の飾りになった。
大人の部屋って感じで気に入っていた。

飲めるようになりたいと思うのは、
やはり大人の資格みたいなものがほしかったからだ。
でも身体が受け付けない。
ストレス解消にビールを一気飲みし、
そのまま気を失ったように眠ってしまってから、
もう二度と飲まないと決めた。

もし、お酒が飲めたなら、
もっと気さくにバカみたいに宴会で騒げただろう。
いや、飲まなくても騒いだ。
でも、酔っ払い相手に頭はいつも冷静だった。
酔っ払い達を自分の車に乗せて送り届けながら、
飲めない体質を恨んた。

もし、お酒が飲めたなら、
もっといい加減に適当に、
気軽に生きられたんじゃないかと思う。
真面目だね、と
時々それが褒め言葉じゃないふうに聞こえた。
学生時代や社会人になってからも、
枠を外した自分になる時間が持てたなら
もっと、違う人生を送れていたんじゃないかと思う。

飲めない男は出世しないと言われた時代もあった。
顔を真っ赤にしている姿は、
確かに出世しなさそうだけど、
真面目そうで嫌いじゃないかった。
でも、私は、"酒飲み女"になりたかった。