想うままひとり暮らし

16才から始めたひとり暮らし、             60代になった今もこれからも

安心の壁

24才で次女の私を生んだ母は、イタズラ好きで、
私が幼稚園から帰って来ると、隠れていることがあった。
探しても見つからないので、怖くてたまらなくなり、
玄関で天井に向かって、おかあさーん!と泣きながら叫び、
隣の家に駆け込んだ。
母は(^^ゞと、笑いながら出て来た。
その時の話をかわいい思い出として話すが、
私にとっては、違った。

母親が急にいなくなったという経験は、
小学生になった後も"恐怖症"のように残り、
夜中に目が覚めてよく泣いていた。
あの時、その恐怖から逃れるために思いついたことは、
自分の母親が死ぬ前に、
伯母(母の5才上の姉)が死んで、
同い年の従妹が悲しむはずだ、
だから伯母が生きているうちは、母は死なない、と。
子供ながら、残酷な"安心の壁"を作ったのだ。

その伯母が亡くなった。

コロナ禍明けにやっと面会が出来るようになり、
何度も、母を連れて施設に行った。
始めの頃は、激変した姿にショックを受けた。
それでも、自分でトイレに行っていたし、
何より、私の服に興味を示し、褒めてくれたり
意思疎通が出来ていた。
たった1年で、みるみる変わった。

母は、兄妹が多くその中の3姉妹(母は真ん中)は、
私の進学についても結婚についても、
いつも3人で心配して話し合っていた。
私にしてみれば煩くて、本音を言うと嫌いだった。
でも、あの頃の伯母達の歳に近づくと、
うるさいとか嫌いという感情は消え、
ただいつまでも元気でいてほしい、
という気持ちに変わっていったのだ・・・

まだ元気だった頃、「お葬式に来てね」と
冗談を言って笑っていた伯母さんに、
明日会って、あの残酷な発想を謝ってきたい。