アパートの住人とバッタリ会うことは少ないのだけど、
なぜか例のクレーマーの奥さんには、運悪く会ってしまう。
私はあの日のことは忘れたみたいに、明るく挨拶をするが、
彼女は顔を向けることもなく、ぼそぼそと小声で言うだけ。
あの時は、ドアを叩きながら、大きな声で
文句を言った人と同じ人とは思えない。
あんな陰気なオーラを出す人と、これまでにも遭ったことがある。
前の職場の責任者2人や、またずっと昔にも。
爽やかな印象の人が善人とは限らない。
が、やはり第一印象で陰気、陰湿と感じた人に、
良い人は少ない。
部屋にいる時間が長いと、
聞こえてくる音だけで、下の部屋の生活がわかる。
家族の会話はほとんど聞こえない。
笑い声がすることも最近ではほとんどない。
ご主人は、6時半に起き、朝食も取らずに出勤して、
夜8時過ぎに帰ってくる。
奥さんの方は、9時半に起き出す。
洗濯はしているようだが、料理をしている音がしない。
一番不思議なのは、4才位になるであろう女のコの声がしない。
夜にたまに走り回る音はする。
そして、たまにぐずるように泣く声は聞こえる。
女のコが赤ちゃんの頃は、幸せそうな笑い声は聞こえたから、
たぶん病気(障害?)のあることがわかり
母親である彼女は、育児ノイローゼのような状態に
なっているではないかと思う。
下の階が発する暗いエネルギーを感じながら、
上の階の私は、生活し続けている。
たまに台所などで物を落としたりした時や、
下で大きな音がすると、
また、"やって来る"のでは?と思う。
唯一の救いは、言い争う声や怒鳴る声がしないことだ。