想うままひとり暮らし

16才から始めたひとり暮らし、60代になった今もこれからも

パンと時代

憂いは、将来の経済的不安くらいしかない今のことを
いつか、あの時は良かった、と思う日が来るのだろう。
過ぎた時間は、美化されていく。
今が昔になった時、「昔は、良かった」と言うに違いない。

「昔は、良かった」は、
歳を取った人の口癖のように言われる。
でも、私の親世代は、「昔は、良かった」なんて言わない。
「昔は、大変だった」と言う。
戦中戦後の大変さを知っているからだ。
過ぎた時間が美化されることは無い。

夏休みに入るのも、夏休みが終わるのも、
うれしかった子供時代。
あの時代、たぶんイジメとか、いろんな問題が、
全くなかったわけではないと思う。
廊下に立たされたりとか、
授業中に頭を叩かれたりとかしても、
子供は子供なりに、自分が悪い事をしたのだからと納得していた。
暴力、なんて言わなかった。
(無意味に頭を叩く先生はいたけれど)
そして親が口出しすることは、まず無かった。
未熟な人間が成長していく中で、先生の役割が大きかった。
親が学校に介入し過ぎる現代、
子供達は、どんな大人になっていくのだろう。

年金が少なければ働いて補うこと、
というのが、専門家のアドバイスだ。
それは正論なのだけど、現実的ではない。
65才以上の求職者で歓迎されるのは、極僅かな職種の人だ。
ほとんどの人は、過去のキャリアは帳消しになり、
未経験の新卒と同じ(しかも成長する可能性も期待も無い)
"パンのみに生きる"ことを初めて経験することになるのだ。

昔のいろいろな仕事を思い出し、
「もう、あんな大変な事、出来るわけない」と思う。
それでも、「昔は、良かった」と思うのだ。
"パンのみ"じゃなかったから。