想うままひとり暮らし

16才から始めたひとり暮らし、60代になった今もこれからも

風の友達とともに

4月に定年退職した友人と会った。
彼女は、短大に入学してすぐに
学生ホールで私から声をかけた、私が"見つけた"友人だ。
あれから、45年が過ぎた。

別の友人は、喜怒哀楽の少ない彼女のことを
感情が平坦な人だと言う。
彼女は、過去の大変な経験をあまり語らない。
無口というのではない。
お世辞は言わず、意思がはっきりしていて、頑固な人。
彼女に腹が立ったことが無いのは、口調がいつも優しいから。
穏やかな風のような人だ。

喜怒哀楽の激しさを隠している私は、
我慢の限界を超えて、何人もの友人と絶縁している。
けれど、彼女とは一度もケンカをしたことが無い。
ケンカにならないのだ。
でも思う。もう会わなくなった友人達は、
私が死んだと知ったら、号泣するだろうが、
彼女は号泣などしないだろうと。
私も、号泣したりしないと思う。
風のように消えてしまった人の
喪失感に浸るだけなのではないかと・・

噴水近くのベンチに座って、
これから始まる年金生活のお金問題について話していた。
噴水の間から爽やかな風に乗って、
生演奏の音楽が流れてきた。
噴水の向こう側にストリートミュージシャンがいた。
『ハナミヅキ』などよく知っている曲を
オーボエで演奏していた。
青空とテレビ塔と噴水と音楽の時間、忘れない。

噴水の裏側で聴き入っていた私達は、
"投げ銭"せずにそこを離れた。
年金生活者だからね」とお互い言い訳をして笑った。
これから、こんなふうに会っては話し、
一緒に老いていくのだろう。