「来年もよろしくお願いします。」と彼女は言った。
遅番専門で一年先輩のMは、まだ私が辞めることを知らない。
「よいお年をお迎えください。」と私は言った。
平和に平和に職場を去って行こうしているのは、
優しさからでは無い。
コロナでずっと止めていたカラオケを
昨日から私のメインのサ高住で再開することになった。
細かい指示や機器の説明も無しに、
ポンと責任者Kから丸投げされたので、勝手に判断して進めた。
私の判断基準は、入居者にとっていいかどうか。
Mやほとんどのコンシェルジュは、自分が大変かどうか。
あくまで仕事として、余計な仕事を
増やさないようにしているのだ。
言葉では、会社や上司の意向、入居者のためと言う。
そう言っているコンシェルジュに限って、
入居者を怒らせクレーム化させているのでは?
「やり過ぎなんだ」と、私の仕事ぶりを見て言う人もいる。
そこまでしなくていい、
そこまですれば入居者に好かれるはずだ、とも言われる。
入居者に好かれ頼られることは、
仕事量が増えるだけで、私は何の得もしていない。
(お菓子を頂く回数は多いかも?)
久々のカラオケを楽しんで貰おうと、
普段は聴かない昔の歌を、喜び褒め拍手する。
仕事中なのに、スナックのママになった気分。
私にも、「1曲歌え」と言う。
『君は心の妻だから』や『ああ上野駅』を
気持ち良さそうに歌っている入居者を前にして、
『Habit』なんか歌ったら、騒音としか思われないだろう。
ちょっとデュエットに付き合う程度で止めておいた。
楽しい時間を過ごした後、
あと一ヶ月で去る私は、
また後ろめたくなった。