ストリートピアノを弾く”よみぃ”さんの動画を見た。
鍵盤の上を滑らかに流れる指が奏でる音楽、
心奪われ立ち止まる人々。
誇らしげでもなく、ただ楽し気な姿に、見入ってしまった。
大人になって何に向いているかわからないと言う人は、
子供の頃にご飯を食べるのも忘れるくらいに
夢中になっていたことを思い出したらいいということだが、
私の場合、オルガンだった。
得意だった絵でもなく、オルガンだった。
母にご飯だよと呼ばれてもすぐに止められなくて、
ずっと弾き続けていた。
そのオルガンは、従姉妹のお下がりで、
よく使うドの高い方のドが壊れていた。
当時はピアノを弾きながら歌うシンガーソングライターが
活躍し始めた頃だった。
詞を書くのも趣味だったから、作詞作曲もしていた。
自分の声とオルガンの伴奏が一体化するのが快感だった。
でも正式に習ったことが無いから、
指使いはデタラメ、楽譜もちゃんと理解していないまま、
全部暗譜して、ただがむしゃらに弾きまくっていた。
クラスの合唱コンクールでは、たまたまピアノを
習っているコがいなかったから伴奏を任された。
伴奏もオリジナル。
無茶苦茶で滅茶苦茶なピアニストだった。
そこまで子供がのめり込んでいたら、
普通の親なら、新しいオルガンかピアノを買ってあげよう、
才能(?)を伸ばしてやろうと思う気がするが、
うちの親は、全く何もしてくれなかった。
”よみぃ”さんの指は、しなやかで長い。
私の指は、1オクターブがやっとなくらい短い。
母は、私がいくら弾くことが好きで好きでも、
限界の来ることがわかっていたのではないだろうか?
そのくせ『エリーゼのために』が聴きたいとか言っていたのだけど。