帰る前、様子を見に行った。
同居している娘さんが米国に行っていて、
部屋に一人でいるお母様のことを心配されていたのだ。
朝食の時、床に転んだまま、起き上がれなくなっていた。
96才、最近、腰を悪くして、室内も歩行器を使って歩いていた。
夜に一人でトイレに行けるか心配で、それを確認したかった。
案の定、歩行器から便器に移る際に転倒し、頭を打った。
事務室に戻った時、ワイシャツや手に血が付いていることに気づき、
再び部屋に戻ってみたら、後頭部から出血していた。
打った時の音から単なる打撲で、切り傷程度だろうと思ったが、
なんせ96才で、今は足元がおぼつかない状態、
このまま、娘さんが帰国する明日まで、
一晩でも一人にするのが不安で、救急車を要請した。
なんとか、キーパーソンの一人に頼み、
病院へ向かって貰えることになった。
私はその日、帰りに病院に行く予定だった。
でも、後は遅番(去年の新入社員)に任せて帰る、
ということが出来なかった。
救急隊の方には申し訳がないが、
私の救急車要請の基準は、
夜中に緊急事態になる可能性があれば、
自分の勤務中に要請し病院に送ってしまう、ということ。
この程度で救急車を呼ぶな、と思われているだろう。
でも素人の直感で、これまで何人も最悪な状態にならずに済んでいる。
いつも思い出すのだ。入社して数か月後の"あのこと"
その時の宿直者と待機者の判断と対応遅れで、
メインの住宅の入居者が亡くなった。
彼女は何度もナースコールを押していた…。
次の日、前日の緊急対応の残業申請をしていいか、
上司に電話を入れたら、「お疲れ様」の言葉もなく冷たかった。
この組織から離れると決めて良かったと思った。
あと2か月で退職する。