胸ぐらを掴んだ事件、
どうしてそんなことをしたか、
彼の話を聞いた時、責める気持ちが消えてしまった。
Nは、見栄っ張りで子供っぽくて、
合わせるのに苦労していた。
でも、食事対応する中で、協力し合い、
助け合い一緒に頑張ってきた。
でも、新人の胸ぐらを掴んだり、どついたりは、
何があってもやったらダメな行為だ、
そう思っていた。
Nの話を聞くまでは。
Nは、作業量に対してあまりにも安い給料、
他の調理師が2人でやるところを
Nはいつも一人でやっている、
忙しすぎるほど忙しい。
よくやっているのは、近くで見ていてわかっていた。
遅番担当のコンシェルジュの言動がきっかけで、
忍耐の限界を超え、辞めると会社に話した時、
常務がやってきて、副調理長の役職と増額した給料を提示して、
引き留めにかかった。
でも、Nの辞める決心は変わらなかった。
Nは、退職の日まで勤務するつもりでいた。
これから年末年始にかけて、
今自分が辞めたら大変なことになる、と言って。
新人が研修に入って、
その人の契約書(?)を見た時、
Nの残された我慢が限界を完全に超えた。
なんと、その額は、
彼を引き留める時に提示された額と同じだったというのだ。
会社勤めを長くしていると、
私も理不尽な待遇に怒り狂って、
自分を見失うようなことが無かったとは言えない。
過去の自分を見るようで、Nを責める気が失せてしまった。