想うままひとり暮らし

16才から始めたひとり暮らし、60代になった今もこれからも

"我が家"という天国

入院する時は、徒歩だった。
退院の時は、タクシーを使った。
病院のベッドに寝ていると、
一週間もすれば立派な病人になる。

帰りたい"我が家"
そこが見晴らしのいい高層マンションじゃなくても、
大きな一戸建てじゃなくても、
ワイワイ家族が出迎えてくれる家じゃなくても。
好きな時に好きなカップでカフェオレが飲める、
世界で一番居心地のいい大好きな空間。
たとえ木造の賃貸アパートでも。

部屋に戻って、一番最初にしたことは、
実家の母への「帰ったよ」の電話。
一番したいことは、大きなベッドで
大の字になって寝転がることだった。
でも、一番したかったことは・・・・・・・オナラ。
気兼ねなく、オナラが出来るという、
これが最高に安らぐ"我が家"なのだ。

帰りたい、と願いつつ、
やっと帰れたのは、亡くなった後だったという
父のことを思い出した。
老人ホームなどの介護施設は、
出口の無い家と呼ばれることもある。
帰りたい、帰りたいと願いつつ帰れないまま、
永遠の家に向かう。

帰りたい"我が家"とは、
こんなふうに気楽にオナラが出来る元の生活をしていた場所のこと。
家族が待っている場所というのとは違う。
(家族は帰ってくることを望んでいないこともある)

主なきアパート、
私が入院した日のままの状態であったこの部屋の
家具や家電や食器や全ての物に
ありがとう、って感謝したい気がした。
まだここで暮らしていける幸せを今は感じている。